2004年12月15日
予防接種に関する検討会
座長 加藤 達夫 様ワクチントーク全国 事務局長 藤井 俊介
日本消費者連盟 代表運営委員 富山 洋子
MRワクチンの安易な導入等に関する緊急申し入れ 去る11月24日に開催された、第2回予防接種に関する検討会で、就学時前にMRワクチンを2度接種することがほぼ同意された、との報道がなされています。
今回の検討会では、ポリオワクチンの「不活化」への切り替え、日本脳炎ワクチンの「組織培養型」への切り替え、MRワクチン導入など、新規ワクチンの導入が論点となっています。新規ワクチンの導入に際しては、過去の経験から1件たりとも副作用を起こしてはならないとの観点から議論をするべきであると思いますが、残念ながら今のところ、接種率を上げることが必要以上に強調され、副作用に対する議論は全くなされていません。
今回の検討会は推進派の学者や医療関係者を中心とした構成となっており、市民の意見を反映するものとはなっていません。市民感覚を要求されるであろうと目される委員の方も2回とも欠席されています。
史上まれにみる副作用多発で中止されたMMRワクチン問題は、現在も大阪高等裁判所にて係争中です。新規ワクチンの導入から中止に至る数々の問題点が解決されないまま、安易に新規ワクチンを導入することは大きな問題です。MRワクチンの導入を議論する前に、MMR問題において国の行った施策に対する深い反省こそ必要です。
貴検討会に対して緊急に以下の申し入れをさせていただきます。また、補足として、MMRワクチン問題を教訓としていただきたく、「危機管理意識のないMRワクチンの安易な導入に反対する理由書」を添付いたします。
貴検討会として、混合ワクチンの導入につきましては、特に慎重な審議を行われますようお願い申し上げます。また、本申し入れを各委員にもご配布いただきますようお願い申し上げます。記 1 麻しんワクチン、風しんワクチンの2回接種が必要かについては改めて広く市民の意見を聞いてください。
@麻しん・風しん共に、ワクチンで疾病の排除(elimination)がそもそも可能なのか、また、排除が必要なのかについては議論のあるところです。貴検討会では、接種率が上がっても自然のブースターが無くなるためにワクチンによるブースターが必要である、接種漏れを救うためなどの理由で、麻しんワクチン・風しんワクチンの2回接種が必要だとされていますが、ワクチン接種で疾病の排除が可能なのかについて明らかにしてください。
A麻しんワクチンを接種した人が、麻しんにかかり、重大な合併症が起きた例について、解熱剤の使用の有無も含めて明らかにしてください。
B04年11月に予防接種実施要領が改正され、麻しんの予防接種は標準接種年齢が生後 12〜15月へ変更されました。1才前後での接種率があがったことで、今年度は麻しん患者が激減したといわれています。これ以上に、2回接種が必要だとする理由を明らかにしてください。2 麻しん・風しんについてMRワクチンとして低年齢期に2回接種をおこなうことについては慎重に検討してください。
@風しんワクチンの2回接種が必要かについては、先天性風しん症候群を防ぐためには接種は遅いほうが意味があるとしながらMRワクチンとして就学時前に接種することが検討されていますが、その時期が適切かどうかについても十分議論を行ってください。
A先天性風しん症候群の報告を見ますと、予防接種が確認できた例は1例です。また、 風しんワクチンを、何回も接種してもつかない人がまれにいると聞いていますが、就学時前に2度接種する必要性について明確にしてください。
B加藤座長は、第2回の検討会で「MRワクチンが認可されれば、予算、有効手段、労力、ライン、接種率、負担から望ましい」と発言されましたが、MRワクチンの導入を示唆されるのであれば、まず予定されているMRワクチンの安全評価について貴検討会で慎重に検証してください。3 乳児検診や就学時健診で、予防接種の有無のチェックを行い、接種を過度に勧奨する ことは止めてください。
4 貴検討会を始め、厚生科学審議会感染症分科会の関係部会等に市民感覚をもった代表 を複数加えてください。
5 検討会メンバーにウイルス学者と広田委員以外の公衆衛生学者(疫学者)、科学史学 者を入れてください。
6 審議会は、国の政策に重大な影響を与えています。被害が出た時の審議会委員の責任 を明確にしてください。
7 予防接種実施要領による「予防接種後副反応報告」を事故発生時の把握システムを根本的に見直すこと。特に新規ワクチンの導入に際しては薬害エイズ後に作成された「健康危機管理」の指針などを参考に迅速に正確にモニターできるシステムをつくってください。
8 「予防接種後副反応報告」を義務付けることを検討してください。保護者にも副作用 の報告が容易な(はがきでの自治体への報告カードを入れる豊中市方式など)方法を検討してください。
9 時節柄特に、インフルエンザワクチンの子どもへの接種を勧めないでください。以上
(補足)危機管理意識のないMRワクチンの安易な導入に反対する理由
新規に予防接種法上経験のないワクチンを導入する際には、89年に導入後副作用多発により中断されたMMRワクチンの問題を検証する必要があります。ワクチン自体の安全性はもちろん、その導入から、副作用の監視と情報収集体制、問題が生じた時の素早い対応など、MMR問題の検証を踏まえて確立される必要があります。今回のMR導入に際して、おたふく風邪ワクチンを外せば良いという認識で導入を検討しているとすれば、MMR問題の二の舞となりかねません。以下にMMRワクチンの問題を再度提示し、MRワクチン導入についての再度の慎重な議論を求めます。
1、国は89年に導入したMMRワクチン問題の真相を明らかにしていません
厚生省(当時)は1989年に新規に導入したMMRワクチンにおいて大きな失敗をおかしました。新ワクチンの導入について検討する際は、その教訓を活かさなければ予防接種行政への国民の支持は到底得られません。厚生省(当時)や推進した研究者らは1994年から1995年にかけて総括をした(臨床とウィルス誌の丸山論文、MMR研究班論文等)と考えられているようですが、死亡認定3人を含む1,040人の認定被害者をだした問題の真相と責任の所在はまったく明らかになっていません。行政だけではなく、医療界も含めて「子供の健康と安全以外のものを優先させた」原因について、多面的に真相解明をする必要があります。2、危機管理に失敗したMMRワクチンの反省を
MMRワクチンの導入自体に多くの問題がありました。その点についての是非はここでは問いませんが、導入した直後予期せぬ副作用が多発した際、とるべき対応には失敗があったといえます。遅くとも89年8月中には中止し、麻しんワクチンの単独接種に戻すべきでした。(理由)
(1)1989年4〜9月時点において「副作用情報収集体制」が機能していなかった
1976年9月の公衆衛生局長通知による「事故報告、被害報告、健康被害発生報告」は、1989年4月から発生していたMMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎等を把握する機能をもっていませんでした。1989年10月、「特別に調査」を指示するまで、厚生省(当時)は、副作用監視体制がないまま、MMRワクチン接種推進に没頭し、問題が指摘され始めると今度は事実を矮小化することに専念しました。具体的には、@被害事例の接種月は、89年4月に12例、5月に11例(うち後に死亡認定1例、障害児養育年金認定1例)、6月に19例、7月5例(うち後に障害児養育年金認定1例)、8月1例、9月38例の計86例です。これらのほとんどが被害認定されていますが、認定作業は90年から開始されており、被害多発といえる事態に対して遅きに失したといえます。
A対策会議は、予防接種行政としては89年9月8日に公衆衛生審議会伝染病予防部会予防接種委員会が、薬事行政としては、89年9月11日 中央薬事審議会生物学的製剤調査会が開催されました。
B学会での報告は、日本小児科学会群馬地方会(89年9月17日)で前橋市からの報告がされましたが、対応は後手にまわりました。
C厚生省(当時)による実態調査の指示は、89年10月13日に調査指示の都道府県宛通知が出されました。しかも、その集計の中でそれ以前に「事故報告、被害報告、健康被害発生報告」(1976年局長通知による)があったとされる事例は、認定された数と比較して少なく、報告は集計もされておらず、現在、既に廃棄されているというおそまつさです。(2)「審議会委員の責任」が問われるべき
以下にあげる2人の方を筆頭に国政の方向を左右した審議会委員の責任についてはこれまでなんら議論されたことがありません。国政を左右する審議会委員の責任を明確にするべきです。@予防接種委員会委員長 木村三生夫氏
当時、木村氏は、『臨床とウィルス』誌において世界の予防接種文献の紹介を毎号連載していた立場にあり、日本でMMRワクチンが製造承認される1988年9月20日よりも前、同年7月18日カナダのオンタリオ州がウラベ株を使用したMMRワクチンの在庫回収と使用禁止を求めたことを、国内でいち早く知った人物と思われます。真っ先に承認や導入に待ったをかけ、一時中止の発言をすべき立場にある人物でした。
A生物学的製剤調査会部会長 大谷明氏
国立予防衛生研究所所長として89年7月公務で渡米した大谷氏は、現地関係者にMMR・おたふくワクチン接種後の脳炎等の症例の有無を照会しています。その回答が同年8月CDC関係者から届き、そこには「日本のMMRワクチン接種後の無菌性髄膜炎の発生はウラベ株が原因だろう」との指摘がありました。大谷氏は7月には問題意識をもっており、その時点で中止をとなえるべきだったといえます。(3)89年10月25日の通知「慎重接種」のあやまり
89年10月末までに市区町村で独自に中止した事例が100以上存在しました(当時の報道からして実数はもっと多いといえる)(04.4.28付結核感染症課長通知「MMRワクチン接種に関する調査」)。あいまいな対応が接種現場=市区町村を混乱させたこともうかがわれます。MMRワクチン導入期間内において、2回も独自に中止をせざるを得なかった自治体もあったことが同調査で判明しています。(4)自然感染おたふく後の無菌性髄膜炎との比較の問題点
国は、これまで一度も麻しんワクチン単独接種と、MMRワクチン接種による安全性・危険性を比較していません。いずれを選択すべきか保護者の判断に委ねるとしながら判断材料を示していません。麻しんワクチンかMMRワクチンかの選択を迫る以上、それぞれのワクチンの被害実態を含む情報を提供する必要がありました。自然感染おたふくとMMRワクチンの比較データのみ示し、国民をMMR接種へ誘導し被害を拡大しました。
1990年以後の幾多の段階でもさらに誤りを繰り返しています。重症の被害例が集中した91年に、自社株導入に際してもなお統一株を残したこと。92年には有効期限の切れた統一株を中心に、期限切れワクチン接種を放置したこと。モニタリングにおいて医師と行政担当者の全てが調査を不正確に実施し(接種月で集計すべきところ、医療機関の請求月で集計)たことも明らかとなっています。
国には訴訟とは別に第三者機関においてMMR問題の検証を行う責任があります。(連絡先)
京都予防接種情報センター(栗原 敦)