2004年6月15日

基本料・施設設置負担金の見直しについて

日本消費者連盟
古賀 真子


1 総論

 電話の基本料・施設設置負担金は電話サービスを利用するために不可避の出費であり、見直しは、電話ユーザ間に大きな負担の変動をもたらし、ユニバーサル・サービスにも影響を与える。接続料問題と切り離して議論を深めることは適切であるが、NTSコストを基本料で吸収させるという方向性のもとに、施設設置負担金の廃止に代えて基本料(利用者料金)を安易に値上げすることは減収分を補うための負担の付け替えと受け取られかねない。社会的コンセンサスを得られるだけの、十分な情報公開と説明をしていただきたい。


2 基本料関係

1 現行基本料水準が適当かどうか、通話料と基本料のどちらの程度の水準を維持することが重要かを考えるための情報が公開されていない。

@通話料と基本料の算定、基本料と施設負担金の算定に共通する費用が各料金原価にどのような基準で配分されているのかが不明。
A収入額比や固定資産額比で配賦されているというが、収入額比の配賦は共通費を変動費とするもので、費用の発生態様と一致しない。
Bデータ伝送役務で負担すべき費用が音声伝達役務で負担されている。配賦基準の見直しにより、コストが吸収されることになるので、早急に精査する必要がある。

2 現行基本料水準について
 現行の基本料は95年に改定されて以後見直しがされていない。基本料については電電公社時代からユニバーサル・サービスの中核として不採算部門とされてきたものが、値上げにより95年から黒字になったとされている。プライス・キャップの範囲内に収まっていれば認可を要しないとされているが、省令上の生産性向上見込率は3年ごとに改訂しているのだから、基本料引き下げ(利用者への還元)の検討がされるべきではなかったか。

3 級局区分には合理性は感じられないが、級局区分見直しで負担増加の途が開かれることを危惧する。物価調整の意味があるのであれば積算根拠が必要である。

4 ユニバーサル・サービスの観点から事業者にはより負担が求められる事住区分料金体系には合理性がある。

5 現状でも事務用施設数は2000年末から大幅に減少している。基本料の値上げは一層の事業用の利用を減退させる可能性がある。基本料の値上げは他の施設に代替しにくい住宅用利用者(一般消費者)の負担の増加を意味する。

6 他国や他の公共料金との比較。競争原理の働かない基本料は基本的に引き下げる方向を目指すべきであり、NTTはそれに代わる魅力的な市場を開拓すべきである。


3 施設設置負担金関係

 日本電信電話株式会社(NTT)成立時の工事負担金(旧設備料)は72000円で、85年の第15、16回電気通信審議会の審議を受けて郵政大臣が認可したものである。  
 工事負担金は1989年4月1日に施設設置負担金と名称変更され、金額は72000円のまま現在に至っている。97年6月27日付電気通信審議会答申で「施設設置負担金と加入者回線コストとの関係について調査し、その結果も踏まえつつ、施設設置負担金の在り方について検討を行うこと。」との要望が出されたのを受けて、98年6月24日にNTTから報告書が出されている。ここでは、マクロ的分析手法として、全ての回線数に対してそれまでに取得した累積の固定資産額による分析がされている。また、それを補完するためにサンプル調査がされている。(注)

1 72000円という負担金が現状でも適正かどうかについて、総務省はNTTに対して以下の点について数字の根拠を開示するよう求めるべきである。

@現在、加入者回線コストはどのようになっているのか。1回線あたりの原価の変化については98年以後調査がなされているのか。
A2004(平成16)年6月8日の東日本電信電話(株)の意見書では加入者回線設備の1加入あたりの取得資産額は東日本16.7万円、西日本16.4万円とされているが、それぞれどのような根拠に基づいた数字であるのか。
B累計固定資産額、物品価格の推移、特に社外委託費を含めた労務費単金はどのようになっているのか。

2 プライス・キャップ制下においても、制度改革においては、各コストデータを公開すべきである。施設設置負担金を廃止した場合に、ライトプランを選択した人とそうでない人に対して納得できる説明がされるべきである。

3 72000円は諸外国の初期負担額と比べて異常に高い。すでに設置が終わったとみられるものについて将来的にも費用徴収するのであれば合理的理由を説明すべきである。

4 ユーザー間の公平を図るためには、設置負担金が全てのユーザーのために使用されたことの応分の負担であるとの社会的合意が必要である。
ライトプラン設置したのは、基本料収支の悪化を回避し、ユーザー・メリットを拡大するためであったはずである。導入時には消費者の選択肢を広げると言って誘引しながら、今後も割高な加算をすることは不適切である。(但し、使用年数に応じた配慮など必要)
5 施設設置負担金廃止の代替措置は必要である。

@(民間マスコミの)アンケート調査によれば65%の人が設置負担金と電話加入権の区別ができておらず、返金されると信じている人も多い。
A加入権の評価替えについて税務当局との早期の調整が必要。
B圧縮記帳を止めると減価償却費があがり料金値上がりにつながるという点については純粋な新規架設にかかる減価償却費がどれくらいあるのかを明らかにすべきである。

6 低所得者向けのライフラインとしてのユニバーサル・サービス基金からの補助があってよい。現状の基金のあり方に問題はないか検討すべき。


4 要望

 接続料問題とも連動し、本問題は、消費者の重大な生活、財産に影響することであるので、今後とも接続委員会、基本料等委員会は審議を公開され、広く国民の意見を求められることを要望します。

以上

(注)加入者回線設備(加入者線路及び地中設備の合計)の累計固定資産額(施設設備負担金の圧縮前・設備除去分の控除後)は96年度末で8兆8000億円で増加傾向。加入電話や専用線を含む1回線あたりの資産価額は12.9万円/回線。地中設備は変化がなく、加入者線路設備の資産価額が増加している。資産価額は毎年3200〜3300億円の新規取得に対して1200〜1300億円の除却がされている。ケーブル自体の物品単価は低減しているが工事に必要な請負費が上昇している。(サンプル調査では1回線あたりの取得資産額は8〜17万円)。
施設設置負担金に対応する1回線あたりの増設資産額は新旧混在した累計取得資産ベースで、加入者線路設備で8万2〜4千円、地中設備で4万4〜5千円で合計12万6〜9千円で、現行の施設設置負担金72000円は設備投資のうちの一部に充当している。(建築工事費の増加等により上昇傾向にある)
 料金体系としては、毎年の新規取得分約4000億円のうち、ユーザーが一時金で支払った電話等の施設設置負担金受入額約1400億円相当分を除いた資産額の部分を過去の累計資産に加え、これにかかわる費用を加入電話の場合では毎月の基本料で回収している構造にある。
 現行の加入電話の施設設置負担金については、その廃止又は値下げを行うことは、既存の基本料の水準を前提とすれば、基本料収支の悪化を招くことになるため、現時点では採ることはできない。・・・今後の加入電話の利用促進を図るためには何らかの見直しが必要。具体的見直しの方向としては、総合デジタル通信サービス(ISDN)で97年7月に開始した既存の契約方法に加えて、新規契約時に施設設置負担金支払いを要しない代わりに、ご利用期間中の毎月の基本料に一定額を加算した新しい契約方法を提供し、ユーザーに利用目的に合わせて選択していただくことで、基本料収支の悪化を回避しつつ、ユーザーメリットを拡大する方策について検討している。