2004年3月10日
食品安全委員会委員長 寺田雅昭 殿
コメント
「遺伝子組換え微生物を利用して製造された添加物の安全性評価基準」について日本消費者連盟代表運営委員
富山洋子2004年2月6日の食品安全委員会の第5回「遺伝子組換え食品等専門調査会」で公表された「遺伝子組み換え添加物の安全性評価指針(起草委員案)」は厚生労働省告示233号等に基づく通知(2000年5月)に対して、CODEX原則ガイドライン、CODEX微生物ガイドライン(2003年7月)等を参照して精緻化したものとはなっている。
しかし「遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性評価基準」(2004年1月)と同様に、遺伝子組換え技術の利用を推進する立場からのものとなっており、今回の遺伝子組換え添加物は伝統的な食品製造に欠かせない酵母菌や乳酸菌などの細菌類などに対して新たな添加物の市場化をもたらすだけに慎重でなければならないが、以下のような問題点を含んでいると思料する。
1.今回の(微生物由来の)添加物の安全性評価基準を策定するにあたっては、既存の食品製造にかかる技術への影響、今回の技術が環境に及ぼす影響などを度外視したまま、安全性評価を行うこと(第3「対象となる添加物及び目的」)(2頁)、は問題である。カルタヘナ国内法は雑草類への交雑だけを対象とし、耕種作物を対象としないなど、現在の日本の法制度では環境への悪影響に対する対策は不十分である。今回の安全性評価基準においても環境、倫理、道徳、社会経済にかかる事項の審査も行うべきである。
2.安全性評価の原則(第4)(2頁)において、デシジョンツリーの発想で評価を試みようとしている。すなわち「従来の添加物に新たに加えられる組換え体成分を中心とする」「動物性の酵素を製造するような場合には宿主と組換え体の比較を行う」とされる。しかし効率化をはかることが主要命題となるおそれがある。本文にもあるが「意図的に生産された有効成分の質的及び量的な変化に加えて、夾雑物等の非有効性成分の質的及び量的な変化、及び非意図的に混入するおそれのある新たな成分」について検討することを「考慮する」ではなく、必要条件とする必要がある。
3.基本的な考え方(第4)(3頁)においては2で述べた観点から予防的な評価が必要であり、安全性の挙証責任は申請事業者が負うべきである。
4.なお抗生物質耐性マーカー(カナマイシン耐性遺伝子等)の使用は「直ちに安全性上問題となるものではない」との評価には異論がある。新たな形質転換技術の開発まで使用は凍結すべきである。
5.「食品安全委員会」と「遺伝子組換え食品等専門調査会」の審議にも問題がある。2004年1月種子植物の安全性評価基準の策定のさいもそうだったが今回の安全性評価基準をめぐる審議でも、各委員の意見が十分に述べられないまま、座長と一部の起草委員、事務局の案が最終案となるおそれがある。委員会にはこの添加物に使用にさいして慎重な立場の者が存在することが審議に説得力を持たせるためにも必要であり、不安を抱いている消費者への配慮ともなる。このパブリックコメントを含め今回も形式的な手続きがまかり通るようであれば、食品安全委員会そのものに対する国民の信頼は得られないであろう。総じて、今回の評価基準は専門調査会に差し戻し、市民の意見、全ての委員の意見を反映させるなど再検討する必要がある。
以上