2002年12月25日
「食品衛生法改正への提言」
日消連 副代表運営委員 山浦康明
12月3日、都内で厚生労働省医薬局食品保健部企画課主催の消費者との意見交換会が開かれました。吉岡担当官が「骨子案」を概説し、「国民の健康の保護」「食品衛生に関して国の情報収集と提供」「販売業者には食の安全確保、危害の発生防止の責務があること」といった法目的を説明しました。また「残留農薬のポジティブリスト制」(食衛法上の残留基準がない農薬が残留している食品は原則として流通禁止とする制度)を2006年度から実施する、としました。さらに輸入食品に対する監視体制の整備、販売業者の記録保管の努力義務規定、法違反に対する罰則強化、と畜場法の見直しなどの報告がありました。
会場には200人ほどの消費者、事業者がつめかけ、延べ70人ほどから、骨子案の不備をつく質問・意見が出され予定時間を超えて質疑が行われました。
この「食品衛生規制の見直しに関する骨子案(食品衛生法等の改正骨子案)」の構成は、以下のとおりですが、下記のような問題点があります。
第1「趣旨」
第2「基本的考え方」
(1)国民の健康の保護を図ることを目的とした食品の安全確保のため、国・地方公共団体の責務(リスクコミュニケーションを含む)及び事業者の責務を明らかにするとともに、食品衛生規制における規格・基準、監視・検査体制、食中毒等の飲食に起因する事故への対応、罰則についてその在り方を見直す。
(2)3つの着目点
@国民の健康の保護のためのより積極的な対応
A事業者による自主管理の促進
B農畜水産物の生産段階における規制との連携
(3)リスク分析手法の導入
第3「主な改正内容」
1 法の目的及び国等の責務
(1)法の目的規定の見直し
(2)国及び地方公共団体の責務
(3)販売業者等の責務
2 規格・基準
(1)残留農薬等のポジティブリスト制の導入
(2)既存添加物
(3)新開発食品の安全確保の充実
3 監視・検査体制
(1)監視・検査体制の整備
(2)営業者による食品の安全確保への取組への推進
4 食中毒等飲食に起因する事故への対応の強化
(1)大規模・広域な食中毒等の発生時の厚生労働大臣による指示
(2)保健所長による調査及び報告
(3)販売業者等の記録保管等の努力義務の創設
5 罰則の強化
第4「その他」
これについて以下のような問題点があります。
第1 趣旨
コメントなし
第2 基本的考え方について
(2)Bにつき「生産段階における規制との連携を強化」では不十分です。農畜産物が最終的に食品となって消費者のもとに達することから「生産から消費に至る過程を総合的にとらえて」とすべきです。
(3)「必要に応じ」は削除し、「食品安全基本法(仮称)の考え方に適切に対応する」とすべきです。
第3 主な改正内容
(1)法の目的規定の見直し
1 法の目的及び国等の責務
第1条関連で「国民の健康の保護を図る」ではまだ法目的としては充分ではありません。BSE問題での失政が再び生じないように「国民の健康を求める権利」という表現を明記し、国・自治体、企業に対して食品安全行政を求める消費者の地位を「消費者の参画」などという形で保証すべきです。
(2)国及び地方公共団体の責務
@ではとくに「国民からの意見の聴取及び施策への反映」を努力規定にとどめることなく、「国及び地方公共団体が施策を行う上で必ず行わなければならない行政手続きとして制度化」する必要があります。Aでも「努める」ではなく「行わなければならない」と強調する必要があります。
(3)販売業者等の責務
「国、地方公共団体が行う施策への協力に努める」ではなく「協力しなければならない」と義務を強調すべきです。
2 規格・基準
(1)残留農薬等のポジティブリスト制の導入
第7条関連で「ポジティブリスト制」の導入には賛成です。国民の健康を考え、導入の準備期間は最短とすべきです。平成18年という案は長すぎます。また、このポジティブリスト制という考え方はすべての食品に拡大する必要があります。「国際的な規格・基準」は最低基準とし、国内での必要性がある場合にはより厳格な基準も設定すべきです。
(2)既存添加物
化学合成品の添加物は、複合的な悪影響、慢性毒性などの恐れもあり、国民の健康を考えて指定を厳格にしその数を減らす必要があります。
(3)新開発食品の安全確保の充実
この項には「遺伝子組み換え食品」「クローン技術応用食品」などバイオテクノロジーや新規の食品製造技術の問題を新たに設ける必要があります。それらの食品のリスク管理は農水省や厚労省が行うことになりますが、その際リスクコミュニケーションを重視し、審議会ばかりでなく、他の研究機関や国民の意見を聴く手続き、省庁の承認に対する国民の異議申し立ての制度を盛り込むべきです。
3 監視・検査体制
(1)監視・検査体制の整備
監視・検査体制の充実に賛成です。しかし公的なものと併せて民間法人の監視・検査が信頼を得るように、監視・検査の内容の公表、第3者によるチェックも行われる必要があります。
(2)営業者による食品の安全確保への取組の推進
@ハサップ制度は見直す必要があります。これは、施設基準や取り扱い基準を策定し無菌状態などを理想とする衛生管理的発想ではなく、トレーサビリティの考え方を重視し、自然界から得た、滋養ある食味を大切にする、食べ物という食品の本質をふまえて、安全な食の生産と流通の透明性確保を重視すべきです。過度の殺菌の義務化や、資本力を必要とする大規模な装置の設置義務化を至上命題とすべきではありません。
A食品衛生管理者の権限を高め、事業の経営者に厳しく勧告できる地位を保証する必要があります。
4 食中毒等飲食に起因する事故への強化
(1)コメントなし
(2)保健所長による調査及び報告
保健所長の権限強化に賛成です。しかし、昨今の保健所の統廃合など、行政の規模の縮小が心配です。逆にこれを拡大・強化する方向性を示す必要があります。
(3)販売業者等の記録保管等の努力義務の創設
「仕入元等の記録の保管等に努める」ではなくトレーサビリティの仕組みを全食品に広げる制度とすべく工夫する必要があります。
5 罰則の強化
罰則の強化に賛成です。ただし、有名無実とならない制度にする必要があります。
第4 その他
「と畜場法等他の食品衛生規制に係る法律の見直し」に賛成です。その際、生産から消費に至る食べ物の生産・流通という視点に立った見直しをする必要があります。
以上