2004日消連第 22 号
2004年8月13日総合エネルギー調査会電気事業分科会
事務局御中日本消費者連盟
代表運営委員 富山洋子
東京都新宿区早稲田町75 日研ビル2F
電話・03-5155-4765 fax・03-5155-4767
総合エネルギー調査会電気事業分科会・中間報告
「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方について」(案)に対する意見総合エネルギー調査会電気事業分科会・中間報告「バックエンド事業に対する制度・措置の在り方」(案)(以下中間報告案)に対しまして、下記のような理由から、中間報告案を白紙に戻すよう強く求めます。
貴分科会におかれましては、中間報告案に対して寄せられた意見を、真摯に受け止め、これらの意見を充分に活かした中間報告案を作成されることを併せて申し入れます。記 1,中間報告案では、原子力発電は、「エネルギー安定供給及び環境負荷の観点から優れた特性を有する」との考え方を大前提にし、原発の稼働を続けていく上での核燃料サイクルの必要性が主張されていることを、問題点としてまず指摘したい。
脱原発のエネルギー政策を進め、核燃料サイクルの要となる再処理は、行うべきではない。
(1) 中間報告案では、「今後、原子力委員会なっどの場で核燃料サイクル政策の在り 方について議論がなされるに際し、次の視点を踏まえて行われることを期待したい」と 述べられ、第一に「現在電力供給の約3分の1は原子力発電に依存しており、我が国国 民の生活を支えるとともに、地球温暖化対策のための二酸化炭素排出量抑制という観点 からも、原子力発電は重要な基幹電源となっている云々」という。
電力供給に占める割合について言えば、日本が原子力発電を、電力ベストミックッス のベース電力に位置づけてきたエネルギー政策の帰結であるに過ぎない。今、その破綻 が日本においては、コストとの関連でようやく浮上してきているが、欧米諸国において は、事故による危険性はもとより、労働者被曝を始めとする日常的な人体への影響、環 境への負荷等が勘案されて、脱原発のエネルギー政策が進められている。
日本においても、本年改訂される政府の長期エネルギー需給見通しについての、総合 資源エネルギー調査会・需給部会の報告書案への意見募集に向けて「市民エネルギー調 査会」では、エネルギー政策を持続可能な方向に転換させようという意図で将来シナリ オを検討している。同調査会によれば、現状を延長した2030年までのシナリオでは、 経済が破綻し京都議定書も守れないという結論がでるという。
原子力は、現状延長が2030年度で10基増、少なめで8基増、多めで17基増と
何を根拠にしているのか明らかでなく、設備利用率は85%などと実態からかけ離れた 試算をされており、政府でさえ、原子力政策についての展望を持ち得ていないと考える。
脱原発を掲げたエネルギー政策を推進するという選択肢こそが、あらゆる意味で社会・経済の破綻を回避させるものである。
(2)ついで、「核燃料サイクルは、原子力の円滑な稼働と密接な関係があり、青森県 六ケ所村において行われようとしている再処理事業は、それ自体の役割と同時に、原子 力発電を安定に運転するための役割を担っているものであることを認識しなければなら ない」という。
日本は、再処理によって取り出されるプルトニウムを、準国産エネルギーとして位置 づけ、割高でもともかく再処理しようという政策が一方的に進められており、かって試 算されていた、いわゆる直接処分と再処理の経済性比較のデータの存在さえも、国会の 審議のなかで否定されていたことに怒りを禁じ得ない。
再処理は、直接処分に比較して費用が嵩むことに加えて、核拡散の危惧が生じる、放 射能を含むゴミが増える、再処理工場自体が強い放射能を帯びたゴミとなる、再処理工 場では、原発が1年で出す放射能の量を1日で放出すると言われているように、非常に 危険な作業が行われるのである。
このように厄介で危険な作業をして抽出したプルトニウムを、エネルギー資源として 利用するためには、高速増殖炉が稼働していなければならない。しかし、原型炉もんじ ゅは、1995年12月8日、ナトリウム漏洩火災事故を起こして止まったままである。 そして、高速増殖炉は、他の国でも実験炉、原型炉の段階で閉鎖されており、現在は、 インドで2,1万キロワットの実験炉が動いているのみである。
そこで、プルトニウムをウランと混合した「MOX」燃料を軽水炉で使用する「プル サーマル」計画が進められているのだが、安全性についても一層の懸念が増す上に、M OX燃料の価格は、同じ発電量のウラン燃料の8倍である。多くの国々では、プルサー マル計画も断念されている。
このような状況から判断してコストがどうであったとしても、再処理はすべきでないが、中間報告案では、直接処分に有利な試算は隠されたままで、直接処分か再処理の選択肢さえも示されていない。
2,原子燃料サイクルバックエンドの総事業費についても納得できない。
18.8兆円というバックエンド費用の算出について、次の3点の問題を指摘したい。
第一に、使用済みMOX燃料の再終処分費用が含まれていない。直接処分の場合には、使用済み燃料の最終処分場が必要であるが、再処理の場合もガラス固化体やMOX燃料の最終処分場を探さなければならない。
第二は、費用計算が40年間に発生する使用済み燃料の半分にも満たない量の再処理のみを対象としている上に、再処理工場の稼働率が100%という想定のもとでの数字である。現実には、六ケ所村の再処理工場は、建設中からトラブルが絶えず、化学試験における不適合の数は現段階でも414件に達している。100%稼働は考えられない状況で、これらを全部処理した場合の費用は、計りしれない。
八田達夫教授(日本基督教大学)は、この費用は少なくとも40兆円にはなると想定されている。
第三には、過去の例では、費用想定が過小評価(当初7000億円とされていた六ケ所村の再処理施設は、2.2兆円かかった)であったことから18.8兆円もその轍を踏んでいるものと判断される。
現在試算されている、18.8兆円のうち、11兆円が再処理に係る費用である。八田教授は、再処理工場を稼働させなければ、約10兆円の節約になった結果、私たち一人あたりの費用は8万円、先に述べた40兆円の一人あたりの負担は、20万円に及ぶという。
使用済み核燃料の再処理については、前述のようにコストの問題だけにとどまらないが、コストの上からも、消費者に負担を強いるものである。
3,現段階では、中間報告案への意見募集をするべきではない
(1)この意見募集については、貴分化会委員の吉岡初子さん(主婦連合会)と渡辺光 代さん(日本生活協同組合連合会)より、核燃料サイクル政策については、原子力委員 会においても検討が行われようとしているので、その結論を待つべきとの指摘があった が、その取り扱いについては、鳥居泰彦分科会会長(慶應義塾大学)に一任され、鳥居 会長の判断でパブリックコメントに付すことになったと言い訳がなされている。日本消費者連盟では、稼働すれば必ず、放射性廃棄物(死の灰)とプルトニウムを生み出し、ひとたび事故が起これば、その被害は、次の世代に及ぶ原子力発電に反対しているが、目前の問題として、再処理工場を稼働させない、その前提となる劣化ウランを使った試験を阻止する取り組みに他団体とともに力を注ぐことを期している。
原子力委員会では、原子力長期計画策定会議を開いて、この計画の改定を検討している
さて、1994年、通産省(当時)が、総合エネルギー調査会のワーキンググループで示した「核燃料サイクルの経済性試算について」によれば、使用済み核燃料を国内で再処理・廃棄物処分すると1キロワット時あたり2.3円、直接処分では、1.23円。
電気事業連合会(94〜95年度)では、直接処分0.99円、再処理1.35〜1.42円、OECDの試算をもとにした原子力委員会(94年)の試算では、前者が0.68〜1.30円、後者が0.76〜2.31円となっている(電事連は、1ドル100円、他は124円で換算)。