2001日消連第15号
2001年8月31日

金融審議会金融分科会第二部会
部会長 福島 俊彦  様

東京都目黒区目黒本町1−10−16
日本消費者連盟
代表運営委員  富山 洋子

2001年6月26日付
「生命保険をめぐる総合的な検討に関する中間報告」についての意見書

 標記報告書に対する、日本消費者連盟としての意見ならびに要望は以下の通りです。貴部会の審議に十分反映していただきますようお願い申しあげます。

一、全体的な審議内容について

 貴部会の基本的スタンスとして、「生命保険をめぐる問題に適切に対応するためには総合的な取り組みが必要である」との認識のもとで、@生命保険会社の財務基盤の充実、A保険契約者からの信頼の向上、B多様な保険商品開発の促進、C監督手法の整備、D保険契約条件の変更等の問題についての検討された結果の中間報告とのことです。
 このうち、@からBまでは、保険会社が、あくまでも自助努力で行う検討項目です。これらについて、従前の生命保険会社のあり方の反省のもとに、責任準備金の充実、株式会社化、基金の調達方法の健全化が議論され、早急に改善されることを、まず要望致します。また、ディスクロージャーの改善、ソルベンシーマージンの詳細の開示、損益状況の詳細の開示、経営指標の開示については、その公正かつ妥当で契約者にわかりやすい方向を議論していただくことに異論はありません。保険会社のガバナンスについても、強化の方向で行政が指導すべき課題であると考えます。
 問題は、財務基盤充実という名のもとに、契約者の利益が害されてならないということです。すなわち、@からBの点を議論することで、いわば免責的にDの契約条件の変更によるリスクを契約者に負担させるようなことは絶対に許されません。以下、焦点となっている、予定利率の引き下げ問題について述べます。

二、予定利率の引き下げについて

 貴部会の報告書の内容は多岐にわたっていますが既契約に付き、保険契約者の同意を得ないでも、保険契約の重要な内容である予定利率の切り下げを行うことができるようにするのが主
なねらいと思われます。この、予定利率引き下げは、保険会社保護にかたより、契約者である消費者に一方的に負担を強いるものですが、この議論の背景である、公的資金の拠出問題があります。
 報告書によれば、この予定利率の引き下げは、「生保は逆ざや問題に直面しており、将来を展望して、安定的な保険契約の維持等の観点から国民、契約者の理解が得られれば、財務上の深刻な問題が生じる前に契約条件の変更を行う。逆ざや問題を改善できれば契約者にとっても将来的利益をもたらす」としています。 予定利率の変更は契約の重要な内容に関わるもので
契約者にとっては、受け取り保険額が激減します。責任準備金の削減される場合以上に減ってしまいます。
 予定利率引き下げは、保険会社保護にかたより、契約者である消費者に一方的に負担を強いるものですが、この議論の背景である、公的資金の拠出については以下のように考えます。
 バブル崩壊後、金融機関(銀行)の不良債権処理のための超低金利政策が続いているため、保険会社は集めた保険料を保険契約時に予定した利率で運用できなくなり損失を累積させました(逆ざや)。2000年度決算で、主要7社が公表した逆ざや額は合計1、3兆円にも上っています。
 一般に逆ざや現象が生保危機の主原因であるとされています。また、ある会社が逆ざやで経営が危ないと噂が広まると、保険契約の解約が殺到するために、破綻が加速されるという現実もあります。大手生保の破綻により、契約者は深刻な被害を受けますが、莫大な国庫支出により、財政上の問題も生じさせます。まさに、この点を回避させることが、今回の予定利率引き下げの目的でああると思います。
 保険業法では健全性を確保するため、責任準備金を積み立てなければならないとされており、破綻した場合は責任準備金額の90%相当額の保険金の支払いが補償されます。生保各社からの拠出金を生命保険契約者保護機構が積み立て、補償の資金援助に使われるのです。積立金が足りないときは、政府の保証により日銀から融資を受け、拠出金の負担が大き過ぎる時は国庫補助もできるとされています。いわば二重の保護を受けています。
保護機構の財源は当初4600億円でしたが、東邦生命の場合は約3800億円の資金援助をしたため資金が枯渇しました。00年には借り入れ限度額が9600億円まで増やされましたが、政府保証や国庫補助のためには、その都度国会の議決が必要であり、そごうのような政治問題にまで発展します。その上、保険業法による破綻処理は倒産手続きと異なり内閣総理大臣(金融庁長官)の業務停止命令で始まるため、当時者の申し立てによって始まる更正手続きに比べて遅くなり被害を拡大させるという問題点が指摘されています。これを、保険契約者の受け取り保険額を減らすことで、問題の解決を図ろうというのでは、根本的解決にはなりません。 
 96年に「金融機関等の更正手続きの特例等に関する法律」(更正特例法)が00年6月に保険業法とともに改正され、保険会社にも更正特例法が適用されるようになりました。千代田、協栄、東京生命は更正手続きにより破綻処理がされました。更正手続きで行われた千代田生命と協栄生命は全く資金援助を受けず、しかも迅速な処理がなされました。実務上は破綻処理についての的確な処理が進んでいるのです。
保険会社の破綻は、まず、保険会社とその劣後債権者である銀行等が負うべきです。契約者に結果責任を負わせるべきではありません。のみならず、予定利率を下げることは破綻の予防策としては極めてリスクの高いものです。予定利率を下げることで、保険契約の解約が殺到し、新規契約も減少するために、破綻が加速されると考えることが現実的です。
 立法論的に見ても、保険業法や更正特例法によらずに私人間の契約を相手の承諾なく変更できる特例をつくることに他なりません。憲法上の財産権の保障に反しますし、私法上の問題も生じます。
 そもそも、保険契約は危機管理のためのものですから、経済情勢の変動に対応できるよう、一般の保険者から預かった保険金は安全確実に運用しなけれならない物です。運用にはリスクがつきものなのに、従前の生命保険各社は危機意識もなく、合理化も経費節減も行わず、経営努力がされてこなかったという批判があります。しかも新規の契約は予定利率を金利変動に連動させているので、新立法をしなくとも、逆ざや問題は2〜3年で解消するはずです。それを、「破綻を避けるため」といういわば脅しによって、契約者に不利益を強いるような立法を行うことは公平公正の観点からも許されません。行政命令によることも許されないのはもちろんです。破綻すれば莫大な資金援助として公費が支出されるといわれますが、更正特例法で資金援助なしで再建できた例もあり、本当の原因は逆ざやであるとは断言できません。
 バブル期の負の遺産である不良債権処理のための、超低金利のため、私たちはすでに莫大な「得べかりし利益」を銀行に奪われています。また、住専問題から、生保の破綻処理に至るまで、気の遠くなるような公的負担を強いられています。
 以上により、予定利率の引き下げには、断固反対いたします。

3、補足要望

 生保問題は、契約高の9割が相互会社という特殊形態であるための情報の公開の遅れと統治(ガバナンス)上の問題から、変額保険、転換契約の問題などの消費者問題を生じさせました。4月から金融商品販売法が施行されましたが専門性の要求される約款の理解などについての説明はまだまだ不十分です。消費者に納得される安定した保障と企業としての健全な発展のために、予定利率の切り下げのような「徳政令」によることなく、経営構造の根本的見直しを後押しするような改革を要望します。
また、貴部会の構成を見るに、関係業界並びに、学者などに委員の構成が偏っていると考えます。消費者、契約者の意見を充分に反映させるよう、より多くの消費者代表の委員就任ならびに委員以外からも広く意見聴取の機会を設けられますよう、強く要望いたします。

以上

(連絡先)
152−0002 東京都目黒区目黒本町1−10−16
日本消費者連盟
電話 03(3711)7766
FAX03(3715)9378
E−mail nishoren@jca.apc.org
( 担当 古賀 真子)