2005年10月31日
大阪市立大学大学院医学研究科
 公衆衛生学
 廣田 良夫 様
ワクチントーク全国 事務局長 藤井 俊介
日本消費者連盟 代表運営委員 富山 洋子
第9回日本ワクチン学会学術集会での貴殿のご発言についてお尋ねとお願い

冠省 益々ご清祥のこととお喜び申し上げます。
 標記の集会に於いて、私どものHPの数字が「1980年が昭和59年の誤り、罹患率が高崎市が41.1%が40.1%の誤り」という誤字をご指摘いただきましてありがとうございました。単純な誤字として、早速訂正させていただきました。
 私たちは、前橋データは、6年間にわたりワクチン接種地区4万5千人と非接種地区2万5千人を徹底的に比較した優れた疫学調査だと考えています。しかるに、貴殿が標記の学術集会において、6.追加発言(ecological fallacy)「ワクチン非接種地域におけるインフルエンザ流行状況、前橋市インフルエンザ研究班、トヨタ財団助成研究報告書」(以下前橋データ)と私どもの呼びかけ文について曲解とも言える批判コメントをされたとの報告を受けました。

 私たちは、インフルエンザワクチンの評価がむずかしのは、インフルエンザかどうかの診断がむずかしいので、効いた効かないという話がでてくるのであり、従来から言われてきたとおり、抗体上昇のみで効果判定するのはまちがいですし、なによりも日本でも世界的に見ても科学的評価に耐えるワクチンの効果に対する調査がないことが問題だと考えています。
 特に日本では、学童に接種してハイリスク者を守るという誤った前提で、社会的防衛効果のないものを社会防衛効果ありとして副作用被害も省みずに長年にわたって接種を続ける政策を続けたことが、有効性に対する根強い国民的不信を起こしたものと理解しています。この社会防衛効果に対する誤りを徹底的に検証したのが「前橋データ」であり、母数の多さ、調査の緻密さ等、他に例のない世界に誇る優れた調査研究であることは明らかです。言うまでもないことですが、ワクチンには副作用がつきものです。無効なワクチンを接種することはもちろん問題ですが、ワクチン接種によって重とくな副作用があることを看過してはなりません。生命、身体、家族の人生まで台無しにされる危険がワクチン接種にはつきまとっているのです。その意味で無効なワクチンで被害に遭うと言うことは二重の意味で許されないと考えます。この「前橋データ」と接種被害者の方々の運動の力が無効なワクチンを副作用を出してまで続けるという政策の誤りを正したのであり、これを否定することは、ワクチンや疫学の第一人者として審議会等でワクチン行政をリードされている方の発言とは到底思えません。

 無効なワクチンで少しでも効果があるような結果を出そうとするから、「科学的評価に耐える調査がない」のだと思いますし、また「誤った政策を明らかにした研究」を正当に評価しないことがワクチン行政の問題であり、市民の不信を増大させる根本原因であると考えます。この点 、標記集会での資料「インフルエンザワクチン」座長:加地正朗、廣田良夫の要旨には、「かつてわが国では、インフルエンザワクチンを無効とする報告が相次ぎましたが、現在では、逆に過度の有効性を示す報告が増加しているようです。・・・その底流には、ワクチン有効性に関する上質の論文を読解できる研究者が、残念ながら国内には少ない、という現状があるようです。・・・また、上質とは言い難い調査研究が、過去においても現在においても無批判に受け入れられる傾向にあります。」とされていますが、現在貴殿が中心となって行われている研究のデザインや結果の評価については大いに疑問があるところです。
 例えば、2001年の法改正によって、二類疾病という類型の定期の予防接種で高齢者へのワクチン接種が始まったわけですが、この根拠になったのは、厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)総括報書・分担報告書(1998−1999)「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」主任研究者:神谷齊の評価であると理解していますが、残念ながらこの報告は、貴殿のいうところの「上質とは言い難い調査研究」ではないかというのが私どもの見解です。
 また、小児に対するワクチンの効果については、平成12年度厚生科学研究「乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究」(主任研究者;神谷斎のちに加地氏と貴殿が主任研究者)がありますが、ご承知の通り、平成12年、13年、14年度の総括としても接種群と非接種群との間に「感冒症状」「胃腸炎」「中耳炎」に過去半年間にかかった率を比較して差がないとされ、「発熱」の項目はなく、結論は、1歳以上には2-3割に効く、1歳未満は効果不明としているものです。平成16 年11 月に日本小児科学会の見解では「1 歳以上6 歳未満の乳児については、インフルエンザによる合併症のリスクを鑑み、有効率20〜30%であることを説明したうえで任意接種としてワクチン接種を推奨することが現段階で適切な方向であると考える」とされています。
 これら2つのデータは貴殿の調査・研究手法を参考にされたものであるとされており、研究のデザインや割付について従前より貴殿の見解をぜひおうかがいしたいと思っていたところです。
 ご多忙とは存じますが、以下の点について、来る11月10日までに文書にてご回答頂きますようお願い申し上げます。この問題につきましてはマスコミ等も非常に関心を寄せています。追って公開の討論の場を設けたいと存じますので、ぜひご参加をご検討いただきますようお願い申し上げます。
一 貴殿におかれましては私どもの解釈はecological fallacyと言われたようですが、前橋  データについての貴殿の評価を教えて下さい。
  また、私どもの解釈のどの点がecological fallacydeであるのか文書にてご指摘下さい。

二 前橋データは集団に対するワクチンの流行阻止効果が検討の主題ですが、個人に対する感染防御効果が十分強力であれば流行阻止につながるのですから両者は全く別の問題ではないと同研究班はコメントしています。この点について貴殿のご見解を教えて下さい。

三 厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症研究事業)総括報書・分担報告書(1998−1999)「インフルエンザワクチンの効果に関する研究」について、私どもの見解はHPに載せているところですが、これに対する貴殿のご見解を教えて下さい。

四 平成12年度厚生科学研究「乳幼児に対するインフルエンザワクチンの効果に関する研究」についての貴殿のご見解を教えて下さい。特に乳幼児へのワクチン接種予定量が500万本ともいわれる現状についての貴殿のご見解を教えて下さい。
以上