2006年4月19日
「 照射食品」についての、私たちの意見
原子力委員会御中
日本消費者連盟
代表運営委員  富山 洋子


 貴委員会におかれましては、放射線照射食品の検討を開始され、すでに全日本スパイス協会等からも意見を得ておられるようですが、「食品照射」について消費者としての意見を申し述べます。

 結論から先に申しますと、放射線を照射された食品、つまり「照射食品」は、消費者としては、これから述べる理由によって受け入れ難いものであると言わざるを得ません。

 今年2月21日、貴委員会が消団連に説明にこられた時の資料によりますと、「今後の取り組みの基本的な考え方(原子力政策大綱抜粋)」として「潜在的な利用者の技術情報や効用と安全性についての理解不足を解消していくことが重要である」とされています。潜在的利用者とは消費者も含んでいると思いますが、私たちは照射食品に対する理解不足で反対しているわけではありません。この時お持ち頂いた資料の7ページに「食品照射のメリット、デメリット」が上げられていますが、これは照射食品を推進する方々が考えるメリットでありデメリットです。
 私たち消費者が知りたいのは資料に記されている「照射により食味が低下する食品がある(米、品種による)」という事実に、なぜ臭いが変わっていくのか、その変化が食品として安全なのかということです。照射された食品が「照射臭」をもち、食欲を落とすとして、NASAが宇宙飛行士の食事への照射をやめHACCPに切り替えたのは有名な話です。 カナダのペガサスフード社が鮭に違法照射をして日本に輸出しましたが、製品の臭いが強くカナダに送り返され、その後損害賠償裁判になった事件、和光堂の赤ちゃんへの離乳食に照射されていた事件も乾燥卵の臭いが変わっていたことが事件発覚のきっかけになったのです。こうした食品の価値にも直接影響する問題が解明されていないことが問題だと思います。

私たちが一番知りたい「安全性」について、推進する方々は「誘導放射能はない」という的はずれな説明を30年以上続けています。そして「照射により生成する物質は、そのほとんどがよく知られるもので、加熱や光の照射でも同様な物質が生成する」と簡単に説明されていますが、これでは前にあげました「照射臭」の説明にもなっていません。
 照射で新しい物質ができるといわれながら、その研究は進んでいません。しかし、1998年、ドイツ、カールスルーエ連邦栄養研究センターが照射によりできる化学物質のひとつ、2-ドデシルシクロブタノンを突き止め、この物質をラットに与え腸から吸収されると細胞内の遺伝子(DNA)を傷つけるという報告をしています。しかし、この実験について貴委員会の資料によれば「WHOの見解(2003)として「・・消費者に健康の危険をもたらすようには見えない。」という引用で安全であるかのように記しています。消費者は「危険をもたらすようには見えない」というような評価を安全の根拠とすることはできません。
 食の安全は、長い長い気の遠くなるような時間の中で、人類の尊い人体実験の上に成立していると考えています。そして、動物実験は安全の証明でなく、危険があることを知る上で重要だと捉えています。 貴委員会の安全に対するデータの評価の仕方には自ら判断せず、権威を援用する姿勢が見られ、私たち消費者は、この評価に納得できません。

 これまで、私たちは安全性や消費者へのメリットについて関係各機関に質問してきましたが、明確な回答がいただけない状況だということをまず申し上げておきます。現在スパイス94品目に照射を申し出ている全日本スパイス協会にも消費者団体が連名で質問状(11月27日付け)を出しましたが、照射許可申請以前には回答すらなく、その後も正式な回答は受けとっておりません(添付資料・2000年12月1日付け申し入れ参照)。こうした不誠実な対応で照射をすすめる業界を信用することは大変難しいと言えます。

 いのちの糧になる食べ物には、安全性が何よりも求められます。
 私たちは、照射食品について、第1に、安全性の問題を指摘致します。

 貴委員会資料はWHOの「10kGyまでの照射は安全とする」という一文を引用して、照射食品が安全であるとしていますが、このような姿勢がいかに消費者の信用を損なっているか、よくお考え下さい。
 確かに、1980年のWHO合同専門家委員会の報告に「10KGYまでは安全」という一文が入ってはいます。しかし、報告にはその根拠を示すデータもなく、そればかりか、照射してできる未知物質の毒性を調べる事や、照射によってできる揮発成分についても調べるようになど課題をあげているのです。推進する研究者たちが専門家として委員になっていることがこうした誤りを犯したと私たち、消費者は考えています。
 私たちは根拠を示さず出された、ただWHOという国際機関を信じろといわれても納得できないのです。この問題は日本で起きた照射ベビーフード事件が刑事事件として裁かれたときに裁判官も、被告側の証人としてたった専門家の「WHOも安全としている」という主張に、検察側証人の安全という根拠データがないこと、逆に危険を示すデータの重要性を考慮し、「安全性には議論が残っている」とし、中神食品(株)を有罪としたのです。

 化学物質の毒性は実際に使う量の10倍、100倍を動物に与えることで確認ができます。しかし、照射した食品を普段の10倍、100倍食べさせるという負荷実験は胃の大きさがあるためできません。ここに照射食品の安全性を知る上での大きな問題があります。しかし、この動物実験で異常が出れば照射食品の危険性はわかります。食品照射研究会議がまとめた7品目(ジャガイモ、タマネギ、米、小麦、みかん、かまぼこ、ウインナーソーセージ)の報告書からも危険が指摘されています。現在許可されている照射ジャガイモでも体重や卵巣の異常が指摘されています。タマネギでは骨の奇形がでたことから、線量や食べさせる量を減らして行った再実験でも異常が出たという報告で、それ以後6品目は許可になっていません。今回、全日本スパイス協会が照射の申し入れをしている94品目中にこのタマネギが入っています。スパイスは少量だからという説明は、消費者を納得させるものではありません。

 貴委員会では、すでにご存じだとは思いますが、各国では様々な実験やそれを踏まえた問題提起がなされています。
 1968年7月、アメリカでは、米国陸軍が申請していた照射ハムとすでに5年前に軍に許可がおりていた照射ベーコンが申請却下と許可取消しというFDA(食品医薬品局)の決定を受けました。因みにこの例から分かるように、照射食品は軍隊の必要性を満たすために開発されたものです。遡っての許可取消しには、FDAのダニエル・ベエインスバニス博士は、「科学の分野は静止しているのではなく、たえず変化し、発展しているものであり、この決定は最新の知識に照らしたものである」と述べています。

 日本における動物実験からも照射食品の危険性が指摘されています。
例えば、1971年6月に報告された、照射ジャガイモのラットによる実験データからは、栄養成分からの問題(ビタミン減少、盲腸肥大)、慢性毒性試験は、@体重増加率の悪化 A卵巣の異常 B死亡率の高さを示しています。
マウスによる慢性毒性実験からは、@体重を抑制する物質もしくは栄養にならない、もしくは栄養吸収を妨げる物質ができている可能性がある A卵巣については、データが欠落しているという問題があります。
 更に、その次世代試験からは妊娠率の低下、離乳期までの三週間の死亡率にも異常を疑わせる結果がでています。しかし、最終まとめでは、照射による影響は認められなかったと、問題点が切り捨てられています。
 サル2匹による短期毒性試験からも、甲状腺の重量減少、腎臓と膵臓の重量増加の問題があります。以上のような問題があるにも関わらず、食品衛生調査会ではジャガイモに15.000ラドの放射線を照射しても安全であるとの結論を下したのです。ジャガイモの芽どめには、7.000ラドの照射が必要ということで15.000ラドという数字は安全係数をも無視されているものです。
 照射タマネギ、照射米、照射コムギ、照射ウインナーソーセージ、照射ミカンの問題点は省きますが、果たして限られた数の動物実験によって食べものの安全性は証明できるのでしょうか。
 私たちヒトの食べものの安全性は先人たちが、何百万年もかけて自らのいのちをかけて培ってきた、言いかえれば人体実験の上に成り立っているものです。
 貴委員会が示されている食品照射のメリットと引き換えに、照射食品による人体実験をされることを私はヒトとして生きる消費者としてよしとしません。
 表示をすれば、消費者は選択できるのではないかとの意見もあるかと思いますが、ジャガイモですら表示ができていないのが実態です。

 そこで、第2の問題点として、食品が照射されているかどうかを検知する技術は確立していないと申し上げます。

 現在、三つの方法が模索されているとのことです。しかし、東京都では98品目の分析を行い11品目に照射の疑いがでたのですが、その後の調査で照射の事実を確認できていなかったと報告しています。
 モグリの違法照射が摘発できないことは照射ベビーフード事件から指摘できます。検知方法が確立していないのですから、二次、三次と照射が重なってもチェックできません。現に、違法照射した食品が日本へ輸出されたまたま表示があったことから発見されています。しかし、表示もなく輸入されている危険があります。これを取り締まることができないのが現状です。
 食品照射を認めるということは、私たちが照射食品の人体実験に晒されることにほかならないと再度申し上げます。

 第3の問題点として、消費者には何らメリットがないということをあげます。
 
 食料の腐敗を防ぎ、食中毒などの病気も減少させるといいますが、日本で照射されたジャガイモが放射線被曝のため、菌に対する抵抗力が落ち腐りが増えるということを無視しているのが問題です。
 食中毒を防ぐに至ってはそのメカニズムを無視した誇大広告と言わざるを得ません。原料を照射してもその後の菌の2次汚染に照射は威力がありません。2次汚染を防ぐためには、食料を完全密封する必要があり、これではコストがかかりすぎます。照射し食品添加物や農薬を使うことによって流通業者に大きな利益が上がるという構造になっています。これがどうして消費者のメリットといえるでしょうか。
 現在、集団中毒は料理店での管理が問題であり、集団中毒を防ぐためには各調理現場に照射施設を作る必要があります。こうした場合、逆に調理人の被曝が問題になります。食中毒は実態がつかめないのですが、家庭内でおきていることが多いとされています。これが現状だとすれば、家庭用照射施設を作るおつもりなのでしょうか。

 照射すると菌は死ぬがカビが生き残り強力な発がん物質であるアフラトキシンを増すと報告されています。貴委員会の資料に逆の報告もあるということだけでは安全の保障にはなりません。
 消費者は経験的に調理する段階での注意で食中毒のほとんどを防いでいます。
2000年12月、全日本スパイス協会が、香辛料への放射線照射の許可を要請しましたが、その理由が菌で汚染され危険と言うものでした。厚生労働省に問い合わせましたが香辛料による中毒事例は知らないとのことでした。自らが扱かう商品を菌汚染で危険とすることが不可解です。
 スパイス業界が香辛料の菌汚染を防ぐ努力を怠り、安易に照射をしようという態度は消費者から大きなしっぺ返しをされると思います。

 第4に、原子力による技術を食品に用いてはならないと主張します。

 私自身は原子力発電にも反対していますが、放射能とは切っても切れない縁にある原子力の利用を、食品にまで広げることは、照射施設がもたらす放射能汚染、そこで働く人々の被曝はもとより、私たちが、本来「食」のあるべき姿として進めている「地産地消」の取り組みを阻害することに連なります。
 私は、どの国を問わず、地産地消を進めることが、現在の構造的飢えを断ち切る確かな取り組みであると考えます。
 「照射食品」が、世界の人々を飢えから救うことはあり得ません。
そして、第3の問題点の前段で触れたことが、杞憂に終わらないかもしれません。

 私は、食品照射が誰によって、何の目的によって進められているのか、さらには、「食」の在り方への議論をも含めて、照射食品についての広範且つ徹底的な議論が必要であると強調し、終わりに致します。

<参考資料>
 『放射線照射による食品衛生法違反事例(1996年〜2004年)』

 届出年月     品名    重量   違反内容  製造国  備考
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1996年6月  朝鮮人参ドリンク   1,400kg  放射線照射 中国 ガンマ殺菌
1996年6月  朝鮮人参ドリンク   1,680kg    〃   中国   〃 
1996年10月  花粉加工食品     165.5kg    〃   米国   〃
1997年1月  粉末清涼飲料百宝    324kg    〃   中国   〃 
1997年8月  粉末サメ軟骨      100kg    〃   台湾   〃
1997年8月  健康食品NOPAL    300kg   〃  メキシコ  〃
1999年12月  粉末サメ軟骨      5.4kg  〃  カナダ 電子線照射殺菌
2000年9月 アガリクスタブレット   4.25kg  〃  ブラジル ガンマ線殺菌
2000年9月 アガリクスエキストラクト  5kg    〃  ブラジル  〃 
2001年1月 焙煎ガラナ豆      3,000kg    〃  ブラジル  〃 
2001年10月 蜜蜂の幼虫粉末     不明     〃  中国    〃
2002年2月  マカパウダー      不明     〃 ペルー   〃
2004年2月  ホッキ貝        4470kg    〃   中国   〃
2004年3月  ハーブ抽出物パウダー  不明     〃    中国   〃
2004年11月  粉末田七人参      不明    〃     中国   〃
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全日本スパイス協会へ申し入れ
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全日本スパイス協会
小林博司 理事長殿

香辛料への放射線照射の認可申請に反対する申し入れ

11月8日には、貴協会と消費者団体との「食品照射に関する懇談会」が開かれました。席上、多くの質問や疑問点が消費者側から出されました。特に放射線照射の安全性問題、香辛料に放射線照射をする必要性や緊急性について、数々の質問が出されましたが、限られた時間であったこともあり、十分な議論がなされたとは考えておりません。そのため、
先日、消費者側の質問をとりまとめた質問状を送付させていただきました。
また、懇談会席上で、安全性に関するデータを全国消団連宛に送ってくださることになっていましたが、未だに送られてきていません。
こうした消費者の疑問に答えないまま、また、約束したデータを提示しないまま、認可のための申請を厚生省に出すのは信義にもとるものです。
 照射したスパイス類を食べさせられることになるのは消費者です。その消費者が、多くの疑問を持ち、質問を出しています。貴協会は、まず、それらに答えるべきです。
 私たちは、貴協会が香辛料への放射線照射の認可申請を性急に行うことに反対します。
2000年12月1日

家庭栄養研究会
神奈川県消費者団体連絡会
主婦連合会
消費科学連合会
食の安全と農の自立をめざす
全国連絡会(食農ネット)
食生活改善普及会
東京都地域消費者団体連絡会
東京都地域婦人団体連盟
所沢生活村
日本消費者連盟
婦人民主クラブ
有害食品追放神奈川県連絡会