6月ソウル行動の報告−−食の視点から 2004年7月6日
日本消費者連盟副代表運営委員 山浦康明6月12日から15日まで韓国・ソウル市において、アジア社会民衆運動団体が、「世界経済フォーラム(WEF)およびグローバリゼーションと戦争に反対する行動」を行った。これは13,14日とWEF東アジア会議に政財界のリーダーたちが集まり、北東アジアの市場拡大を討議したからだ。日本からも30以上の運動団体が実行委員会を作り100名がソウルでの行動に参加した。その中には、脱WTO草の根キャンペーン実行委員会、ATTACジャパン、全日本農民組合連合会、フォーラム平和・人権・環境、と並んで日本消費者連盟も参加した。
12日(土)は、米軍の装甲車にひき殺された韓国の二人の中学生の2周忌にあたるため、18時から「彼女らを偲ぶキャンドルナイトの集会」が光化門近くの街頭で行なわれ、その後同場所で19時から「イラク派兵および朝鮮半島に平和を求める全国集会」が約3000人が参加して行われた。22時からは東国大学のグラウンドに舞台を設定して、「グローバリゼーション、戦争および米国に反対し、朝鮮半島に平和を求める文化イベント」が約1000人が参加して行われた。韓国の舞踊や演劇ととに日本の参加者も寸劇を上演し、会場をわかせた。
13日(日)は11時30分からマロニエ公園で、「日韓FTA反対共同行動」が行われ、KoPA(韓国・WTOおよびFTAに反対する国民行動)のイチョンヘさんとともに、日本参加者から「脱WTO草の根キャンペーン」の田中徹二さんも挨拶した。13時から近くの大通り「大学路」を数千人が占拠して「グローバリゼーション、戦争および米国に反対し、朝鮮半島の自主再統一を求めるKCTU(民主労総)の集会」が開かれ、各国の活動家とともに日本の全労協の遠藤一郎さんが挨拶した。14時から同じ場所で「WEF東アジア会議反対大集会」が開かれ参加者は1万人にも及んだ。その後15時から17時すぎまで、WEFの会議場である新羅ホテルに向かってデモ及び直接行動がおこなわれ、参加者は12000人にものぼった(日本からも100人、韓国以外のアジアの国からも30人が参加した)。
14日(月)9時30分から高麗大学で、「アジア社会運動会議」が2日間にわたって行われ、日本の75人を含め200人がそれぞれ全体会合と分科会に参加した。開会式では韓国の民主労総から、「自分たちは経済のグローバル化に対抗する韓国国内での労働者の運動を闘っている、参加者でイラク戦争に対するアジアの民衆の連帯など反戦・反グローバリズムの共同闘争を論議しよう」、と挨拶があった。
10時から12時30分まで全体討論T「新自由主義と戦争に対抗するアジア社会運動の課題」が行われ、フォーカス・オンザ・グローバル・サウス、ヴィア・カンペシーナ、インドの女性団体とともに、平和フォーラムの福山事務局長が「グローバル化に抗する世界的共同行動の連携強化」を訴えた。
WTOサービス問題、非正規職労働者と人権など15にものぼる分科会のうち、「食料主権の分科会」は14時から16時30分まで開かれた。主催はヴィア・カンペシーナ、ホスト団体は韓国の全国農民会総連合と女性農民会だった。冒頭、全国農民会と民主労働党の代表が挨拶し、その後パネルディスカッションに移った。パネリストはフォーカス・オンザ・グローバルサウス、ヴィア・カンペシーナ、韓国・全国農民会、日本の全日農の御地合書記長、タイの農民団体、ブラジルからきた世界社会フォーラム事務局で、それぞれがかかえている問題を紹介しあいながら、これからの運動の方向性を提起した。「世界的に農産物価格が低下しており、輸出国の農民も借金増大に悩まされ、土地も失っている」、「食料生産システムは超国家企業の手に握られている、韓国では離農も進んでいる」、「日本の農家はURラウンド以後収入も大きく落ち込んだ」、などの報告があり、食料主権を巡り討論があった。
「WTO・FTAと食の安全の分科会」(下記参照)は、19時20分から22時15分まで行われた。
15日(火)は9時から「FTAに対する人々の戦略」をテーマとする分科会が行われた後、13時30分から全体討論U「アジア民衆社会運動の連帯強化の方法」が討議された。その後16時30分から共同宣言の討論が行われ、その後宣言文を採択し終了した。宣言文では今年7月のWTO一般理事会に対抗する食料主権を求める世界同時行動ウイーク、9月10日の「WTO・FTA反対の一斉行動」、05年香港で開かれる予定の「WTO第6回閣僚会議に対する行動」なども提起された。
こうした一連の行動で、日本の市民運動も、様々な主体の運動や、地域・職場の運動を反グローバリゼーションという視点から結びつけ、それを国際的な運動へとつなげていく必要性が感じられた。また、アジアのFTAの動きは、経済的な支配従属関係の拡大、民衆同士の対立・分断をもたらすものであることから、日本の運動にとっても対象にしなければならないことも実感することができた。また韓国の若者がスタッフとしても各運動のリーダーとしても活躍していることがとても印象的だった。
WTO・FTAと食の安全」分科会報告責任団体:日本消費者連盟/社団法人 環境農業団体連合会(韓国)/GMO反対生命運動連盟(韓国) 6月14日、午後7時20分〜10時15分
Korea Univ. College of Political Science & Economics 205教室この分科会は直前になってから企画されたため、参加者も15名ほどだったが、韓国と日本の食をめぐる状況を報告しあう中から、経済のグローバリズムがもたらす食の不安を討議し、運動の方向性を検討することができた。
司会: 山浦康明 日本消費者連盟副代表運営委員
: キム・ウンジン(Kim Eunjin)Korea Anti-GMO Network
通訳:キム・ポッキ(金福姫)
あいさつ:イ・テグン(Lee Tae-Geun)(社)環境農業団体連合会会長
今、ゴミギョウザが国際的に問題となったり、遺伝子組み換え食品・飼料の安全性など韓国においても企業の金儲け第一のやりかたが消費者から批判されている。これは食品の生産と消費が分離され、大企業とりわけ多国籍企業がその中に介在することから生じる問題だと思われる。今日はこうした問題を参加者の間でしっかりと考えよう。
1)各国の状況
ソン・ヤンド(Son Yongdo)フードコリア調査研究専門委員:WTOやFTAの体制下でコーデックス基準がつくられ食のグローバル化が進んでいる。韓国の伝統食の一つであるキムチが中国から大量に輸入されている例もある。一方、韓国では畜産物の生産基準、食品製造の行程管理の必要性、食品安全の国内基準の実効性確保などの課題もある。生産者と消費者の共存をどうはかるのかも大切な課題だ。
山浦康明:日本では、第2次大戦後「食品衛生法」が作られ、また2003年には「食品安全基本法」が作られた。不衛生なものを市場から排除するという観念は定着しているが、新規食品、化学物質使用の問題、BSE、表示偽装など消費者にとって食への不信はかえって高まっている。食品安全委員会の安全性評価やCodex委員会の食品の安全基準についても、グローバル基準がハーモナイゼーションとして低位平準化する傾向もあり消費者による監視が必要だ。
2)多国籍企業の活動内容について
パク・ミンソン(Park Mim-Sun)韓国正農会・大学教授
96年以来、遺伝子組み換え作物を扱うモンサントなどの企業は作付け面積をどんどん増やし、今や第2、第3世代の遺伝子組み換え生物を市場化し農業、種子、医薬品の支配も強めている。またシンジェンタ社とアドバンタ社との合併など、穀物メジャー、医薬品会社などの再編も進んでいる。しかしこの遺伝子組み換え作物の市場化には次のような問題点がある。アレルギー症状が出るなど健康面での問題、スターリンク事件のように未承認のものが混入する恐れ、遺伝子組み換え作物が肥料となり、環境問題を引き起こすこと、企業の種子の特許権の設定により農民の生存権すら侵されること、などである。
3)市民・消費者の運動
アン・スング(An-Soung)ソウル市教育委員会委員:2002年より食の安全を確保するために、韓国の学校給食改革運動を行ってきた。16の自治体でそのための予算を確保し、学生生徒の保護者の団体と協力して、国産の農産物を利用し1日に600万人の給食を提供している。この運動の意義は、子どもたちによりよい食べ物を与えるのは信頼される大人の責任であること、安全な農産物の生産と流通を促進すること、地方自治体に給食支援の条例を策定させ、韓国の農産物を使用させること、生産者と消費者の直接販売のルートを広げること、新自由主義の経済に対抗する運動に寄与することなどである。
倉形正則(市民セクター政策機構、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン):このキャンペーンは1996年から運動を開始し団体会員分を含めれば現在100万人の市民が参加している。運動の柱の@はGM作物・食品の輸入規制・表示を求める運動である。表示制度を政府に要請し部分的ではあるが実現した。GM食品の危険性を訴えるキャンペーンにとりくんだ。また市民の力による検査活動を行いスターリンクコーンの検出・告発をした。柱のAはGM作物の国内作付け・開発を許さない運動である。GMトマト、イネ、コムギなどの開発阻止のために闘っている(モンサントは3月GMコムギの開発を中止した)。柱のBはCodex委員会のバイオテクノロジー特別部会の監視活動である。Codex基準を世界標準として強制するのではなく、各国のより厳しい基準を尊重させるべきである。また05年からGM動物(魚)などの安全性評価の議論が始まるため、監視活動を強めるつもりだ。
4)市民の国際連帯の方法について
チェ・ドングン(Choi Dong-Geun)(社)環境農業団体連合会:WTO交渉が行われる中で、消費者は公共サービス(福祉)、環境問題などについて危惧しているが、農業問題においいても消費者・生産者の国際連帯の可能性はある。多国籍企業の手になる輸入食品が各国に流入しているが、その安全性問題でアジア各国の市民は情報交換し討議できる。これについては各国間の国情の違いもあるところであるが、多国籍企業の圧力に対して各国の利益を守るために国内基準を尊重すること、水・空気など環境を守るために各国の農業を守る視点を保持し国内の農産物の自給率を高める政策を尊重することをお互いに承認しあうことが消費者市民の国際連帯には必要である。
5)まとめ
山浦:食の安全をめぐる韓国、日本その他アジア諸国の状況の違いはあるものの、食の安全基準は新自由主義の経済イデオロギーのもとでグローバル化した結果、各国の消費者・市民にとって、安全基準の事実上の引き下げとなっている。WTO体制化ではSPS協定を介してCodex基準が力を持ち、FTAでは相互認証制度などにより相手国の緩やかな基準を認めてしまうおそれがある。これに対して私たちは各国の違いを尊重しつつ連帯の道を探っていこう。今年は国際コメ年であり、アジアの人々にとって特に重要なコメに対してバイオテクノロジーなどを介して多国籍企業が支配するおそれがある。日本でも市民が11月に対抗アクションを行う予定だ。この問題に対して我々は連帯して闘おう。